Giant Snowflake

そっと赤い鳥が光り輝く壁に手を添えてそっと微笑んだ

思い出したのだ。この手はさまざまな人の血で真っ赤に染まりすぎていたのを
それでも、母と妹を守るため。という名目の元でずっと剣を振り続けていたのを
恨みも憎悪もなかったというのに僕は僕が守るべき人たちを狂わせ、戦わせ、服を血に染め上げさせたことを

それでも、それでも。と祈りのように剣を振って、敵を屠って…最後に残ったのはそんな己が受けるべき罰を罪を変わりに被らされた母と妹の姿だったのを

そんな僕が、ひっそりと、静かに、けれど晴れやかにそして、妹と同じように笑う彼女に触れるなんてもう、できない。と思ったのに、この期においてもまだ、彼女に会いたい。彼女に触れたい。なんて…なんて未練がましくて浅ましくて卑しいんだ…

「会いたい、よ…ナナリー……」


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「ライ、さん？」

ふんわりとやさしく頬を撫でていく風がなんとなく、ライさんのあのどこか武骨で少しだけ冷たい大きな手に似ていて、ぽろりと涙がこぼれた

最初は、不思議な人と思っていました。変わらない雰囲気の中に見え隠れするやさしくて、暖かい、お兄様みたいな雰囲気なのに、どことなくスザクさんに似ているような、なんて不思議な人なんだろうって
けれど、お会いしていくうちに、触れていくうちにおずおずと私の頬に触れてくる傷だらけの指先が冷たいのに温かくて、恥ずかしいのにもっと触れてほしい。なんて恥ずかしいことを思ってしまうくらいに、不器用で器用な触り方をしてきたライさんを愛おしいと、思いました

好きだ。と思ったんですよ

「ライさん。あなたは今、“ここ”にいますか？」

この問いかけが風に乗ってライさんに届けばいいのに、なんて


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「ナナリー？」

ふんわりと鼻をくすぐる甘く愛おしいナナリーに似た香りに俯いていた顔を上げて、暗いこの空間にぽっかりと不自然に空いた空を眺めてみれば、やさしく包み込むナナリーのような青空に目を細め、壁についていた手を翳した

風と一緒に聞こえてきたように思えるほど鮮明なナナリーの悲しげな声に決意したはずの心が震えて、最後の一歩を尻込みさせる
僕が今からすることはナナリーと、ひいてはナナリーを大事にしているルルーシュをも悲しませるのはなんとなく、分かってはいた。でも、これ以上あそこにいればきっと、ナナリーが危険な目にあう。それだけは、避けたかったから

車椅子がなければ動くことのできない不自由な体、開かれることのない瞳、力を込めて抱きしめれば折れてしまうのではないか、と思ってしまうほど細く小さな体

宝物のように大事で、でもそれだけじゃくて、僕が持ちえるすべてを捧げたいと願うナナリーがこの世から消えてしまう。それが僕には耐えられないんだ

だから

「ごめんね、ナナリー。そして、ありがとう」

こんな僕を暖かく包んでくれて、ありがとう。…………さようなら